Music & Technology
サウンドレコーディング技術認定試験の概要

1877年にエジソンが“すず箔円筒方式”の蓄音機を公開してから僅か140年の間に、音楽の録音再生技術は格段の進歩を続けています。現在のレコーディング環境はCompact Disc(CD)に代表されるデジタルメディアに対応する録音環境が求められています。そして先進のDVD-Audio、SACD、音声圧縮メディアなどの様々なデジタル技術への対応も必要です。これらを録音するには、以前からの高額なプロ用機器も必要ですが、Pro Toolsに代表される汎用機器を使用しての録音も増加しています。
一方、音楽スタジオで働く人に求められる能力は、先進の録音機器をオペレーションする技術的知識は当然ですが、セッションを円滑に図るためのコミュニケーション力や、音楽的知識なども必要不可欠です。このような音楽とテクノロジー融合の時代にあって、そこで働く人の能力は、技術や機器の進歩以上に問われています。

○日本音楽スタジオ協会の資格認定制度

一般社団法人 日本音楽スタジオ協会(以下JAPRS)は、平成元年に任意団体として発足し、平成2年に通商産業省(現・経済産業省)より公益法人の許可を得、今年で27年目を迎えました。
JAPRSでは、任意団体の当時より資格認定制度の導入に向けて検討を進めていましたが、平成12年に資格認定制度委員会が発足したことを契機とし、「良いスタジオであるために最も大切な要件はスタジオで働く人にある」という基本理念に基づき、公益法人であるJAPRSにとって人材の育成は極めて重要な事業と位置付けました。
このような経過により構築した技術認定制度は、広範囲に優秀で感性豊かな将来性のあるレコーディングエンジニアの育成を主眼に置いています。
そして平成14年から始まった「サウンドレコーディング技術認定試験」は、これらの状況を踏まえ、若人達の育成計画を含めて、度重なる討議を繰り返して計画され、実施しているものです。

○サウンドレコーディング技術認定制度の教科書

サウンドレコーディング技術認定制度の導入に際しては、その基本となる教科書の作成から始まり、平成13年に「サウンドレコーディング技術概論」を発行し、翌年より増刷の後、平成16年4月に第1回目の改訂版、更に平成21年3月に第2回目の改訂版を発行し、本年3月に「再改訂版」第2刷を発行するに至りました。
本書は、現在レコーディングに関与しているエンジニア諸氏の日常的マニュアルとして利用して頂くことは勿論、これからレコーディングエンジニアを目指す方々にとっては、教科書として役に立つことと確信しております。また、この教科書ほど多くのベテランエンジニアとスタジオ関係者達が一同に会して著作されたものは例がなく、世界に誇れる教科書と考えています。

○サウンドレコーディング技術認定制度に関する技術書

平成18年1月に、JAPRS賛助会員・建築音響専門会社スタッフの協力により、「音楽録音スタジオにおける音響設計ガイドブック」を発刊しました。このガイドブックは、建築音響のポイントを簡潔に解説することを目的として、音楽録音スタジオという音響空間に求められる様々な性能を構築する経緯に関し、遮音、音場、空調、電気、法規の各項目に区分し、音楽録音スタジオが造られていく過程で必要となる知識や技術の内容がコンパクトにまとめられ、建築音響を理解する技術資料集として最適な内容となっています。


○サウンドレコーディング技術認定試験の問題集

平成14年から始まったサウンドレコーディング技術認定試験については、518ページを超える教科書だけでなく、本試験に準じた問題集を作成することでより効果的な学習が出来ると考え、本年度の認定試験にあたり、2017年度版技術認定試験用の問題集(B5判、四者択一問題および解答編&技術資料集)を発行致しました。この問題集は「サウンドレコーディング技術概論 再改訂版」および「問題集・巻末技術資料集」並びに「音楽録音スタジオにおける音響設計ガイドブック」の内容に準じて作成され、音響の理論、電気音響とスタジオシステム、レコーディング技術と先進技術、音楽・音楽著作権・音楽録音の流れ・録音の歴史等を網羅した幅広い内容となっています。

○サウンドレコーディング技術認定試験の範囲

試験の範囲は「T音響の理論」、「U電気音響とスタジオシステム」、「Vレコーディング技術と先進技術」、「W音楽・音楽著作権・音楽録音の流れ・録音の歴史」に分類され、多岐に渡りますが、これだけは知っていて欲しいと考えられる基礎知識からの試験を考えています。
資格認定制度委員会・出版プロジェクトが作成する問題については、「2017年度版サウンドレコーディング技術認定試験問題集 技術資料集」および
「音楽録音スタジオにおける音響設計ガイドブック」からの出題を予定しています。
試験問題の難易度については、受験者によって感じ方が異なると思います。既にスタジオで業務に就かれている方々は易しく感じられると思いますが、これから各学校で「サウンドレコーディング技術概論・再改訂版」を学習される学生においては、入学年次の違いにより履修している範囲が異なると難易度の感じ方に差が生じてくると思います。

○認定証の交付

これらの試験結果に対してはJAPRSより「認定証」を交付致しますが、サウンドレコーディング技術認定試験については、受験者の合否を判定するものではなく、受験者の今現在の能力レベルを判断することを基本としていますので、自分の得意分野、不得意分野を確認するのに最適と考えます。そのため各自の正答数の合計による総合評価のA〜Eランクが認定されると共に、各分野別の「成績証明書」も交付致します。

 この「認定証」および「成績証明書」は、JAPRSの会員各社における人材採用にあたり、必ずや役立つものと確信しておりますので、受験者は大切に保管の上、自分のサウンドレコーディング技術の評価が必要とされる様々な機会にお役立て下さい。Music & Technologyを旗印に次世代を担う優秀な人材が数多く輩出し、将来の日本の音楽文化を支えてくれることを、心より期待するものであります。